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"言い訳しないで・・・DON'T EXPLAIN"




WEBSTER YOUNG/ FOR LADY
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WEBSTER YOUNG-tp
PAUL QUNICHETTE-ts
MAL WALDRON-p
JOE PUMA-g
EARL MAY-b
ED THIGPEN-ds
June 14 1957
PRESTIGE
1.THE LADY 2.GOD BLESS THE CHILD 3.MOANIN' LOW 4.GOOD MORNING HEARTACHE 5.DON'T EXPLAIN 6.STRANGE FRUIT


"DON'T EXPLAIN"という曲が好きだ。
 作詞作曲ビリー・ホリディである。僕は30才代の頃良くホリディのアルバムを聴いた。村上春樹も著書『ポートレイト・イン・ジャズ』のなかで、「若い頃」良く聴いたと書いている。
 彼女の歌が何故好きだったのか思い出すと、曰く言い難いこともあって書きづらいが、ともかく痺れたものだった。
ホリディの晩年の歌にはある意味崩れたところがあって、そこに惹かれるというのは、彼女の歌に「赦し」を感じたからではないかと春樹氏は書いている。
まさに同感であって、ドラッグ、酒、男にとことん打ち拉がれた彼女の人生の果てに得た心境を物語っていると思う。

 彼女の自伝を映画化した「奇妙な果実」を観たのも丁度そのころだった。何せ来る日も来る日もホリディ漬けであったからであろう。
 ダイアナ・ロス主演というところがミソで、彼女の吹き替えなしの肉声によって場面場面で歌われたホリディ役のロスの歌は鮮烈であった。
 夫の浮気を知った場面でこのDON'T EXPLAINが歌われたのではなかったろうか。
 ♪黙って、言い訳はやめて
 ただここから出ていかないって言って
 あなたが戻って来ただけで私は嬉しいの、だから言い訳はもういいの
 静かに、言い訳はやめて
 なんの得があるの?
 口紅のことはもういいの 言い訳はもう沢山
                         * 『ジャズ詩大全』 第一巻:中央アート出版社より
 という歌詞で、ありがちな男女のなかにおきた事柄、思いを詩にし曲を書いたホリディの名曲である。

 先日たまたまいつも行くジャズ喫茶で珍しくヴォーカルでこれを聴いた。H.メリルのH.メリル WITH C.ブラウンのあの有名なアルバムだ。
 今年末に道内をヘレンが公演してまわるというので、マスター珍しく新調したらいい。全くの偶然というか、店に辿り着くまでこの曲のことを思っていたからちょっと吃驚もした。

 さて、家に帰ってこの曲の入っているのを片っ端から探したら、何と意外や最近入手したW.ヤングの唯一のリーダーアルバムであるFOR LADYにこれが入っているのに気付いた。このアルバムがホリディの追悼アルバムであることに初めて気がついたのだが、これまた何の導くところなのかと。

 では、やっぱりホリディ自身の歌も聴かねばなるまい。何度も繰り返し歌った歌であるから僕が持っているもののなかでも、2~3枚はあった。
 オルターネットで繰り返し吹き込まれたまさにこの曲をピックアップした輸入盤もある。
 物の本によるとどうやらデッカ盤のLOVER MANというアルバムに入っているようだが、僕が持っている同名のLOVER MANはMCA盤だ。話の辻褄が逢わないが、残念ながらこれには入っていない。一曲目がLOVER MANである。
 しかしこのアルバムを覆い尽くすのは、哀しげな趣であってDON'T EXPLAINこそ入ってはいなが彼女の独特の抑揚で歌われる歌は、辻褄あわせの「言い訳」を赦して貰えるだろう程に味わい深く相通じるものがある。

 インストとなるとD.ゴードンのBULE NOTE盤A SWINGIN' AFFAIRも有名である。ゴードンのこのアルバムのなかでも大好きなバラードだ。彼のテナーから紡がれるフレーズにとことん惚れた。ホリディの追悼盤にあるというパターンから外れて、これだけがピックアップされているのが嬉しい。

 追悼盤となるのだろうか、C.ベイカーのその名もBAKER'S HOLIDAY。この最後にDON'T EXPLAINも入っていた。


by jamal2 | 2010-01-17 10:06 | JAZZ | Comments(0)


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