小学生の頃から落語や漫才が好きだった。それをTVで見ながら番茶をすすり塩煎餅を齧りながら聞いていた。 番茶は出がらしでもよく、塩煎餅は端のぱりぱりとするところから食べるのが流儀だった。 塩辛いものが好きだから、鮭も塩引き鮭がよく特にハラスの脂ののったところが好きで皮ごと茶漬けにすると最高だ。ご飯も炊きたてに塩をふりかけてそれだけで食べることもあった。 一度、ご飯に塩をあまりに多くかけすぎて、それをお湯で溶かしてもまだしょっぱくて食べられそうになくて困った。で、思いついたのが学校の理科の時間に習った「中和」という作用のことだ。酸にアルカリを足すと溶液が中和するというあの中和だ。 これはいいことを思いついたと思ったのはいいけれど、塩の逆は砂糖だと思い込んでいた。その勘違いをよそにやってみると、とんでもないのが出来上がってしまって、ますます食べられなくなったという経験をした。 話を戻すと、番茶と塩煎餅と落語と漫才という取り合わせだが、落語といっても小学生でわかるのは「どうもすみません!」の林家三平とか「山のあなあな」の三遊亭歌奴(後の圓歌) ぐらいのものだったろうが、たまには古典も聞いていたかと思う。それも前フリを楽しみして気がする。 毎週日曜日「笑点」の大喜利も楽しみだった。大喜利の司会者も初代の立川談志からだった。そのころのメンバーで未だご存命なのは今の林家木久扇(前木久三)だけらしい。 こんな話を続けているときりがないのでここまでとするが、大学に入ってからはテレビも持ち合わせていない貧乏学生だったので、ラジオから流れる落語などをエアチェックしてカセットテープに残して、繰り返し聞いていたものだった。 ジャズも聞いていたから落語とジャズという取り合わせの季節をむかえる。 噺家にジャズ・ファンが結構いるらしいが、両方ともアドリブが命だからというが、それはこじつけだろう。前フリにしたってちゃんと計算済であることは誰だってわかる。それをアドリブであるかのように自然と聞かせるのが彼らの修行のなせる業だ。 で、この話どこにオチをつけたいかと言うと、「番茶も出花」という話である。 このバリー・ハリスのPLAYS TADD DAMMERONというアルバム。 番茶でいえば出花の濃くて渋みとほんのり甘味が効いたところではないかと思った。淡白で全体がゴリゴリした重みと濃い茶褐色を思わせる渋み。それがタッド・ダメロンの名曲の数々に色付けされる。 アルバム全曲ダメロンの曲で埋め尽くされていて、バップ時代の演奏で親しまれている名曲揃いだ。あ、これもダメロンの曲かと気づくことも多い。If You Could See Me Nowなどはその良い例だ。 甘味に渋みを混ぜた味わいのSoul traneなどはバラード調の曲なのに、甘さに流れずぐっと抑制の効いたところを聴かせている。バリー・ナリスの堅い淡白な打鍵に、ゴリゴリというベースとバッサバッサというブラシが被さってくるいい演奏だ。 どの演奏もちょっと前に出過ぎじゃないのと言う程、迫力のある重低音を聴かせるジーン・テイラーのベース音が終始圧倒する。 また、どれも最後のOur Delightに至るまでカチッとしまった緩みのない演奏と録音で、シャキッと塩味も効いている。 因みにタッド・ダメロンは、すぐれた作編曲者でありながら、プレイーとしてはぱっとしないというのが定評だ。確かに「フォンテンブロー」を聴いたかぎりそれを否定しがたいところがある。そして若いプレイーが彼の曲を忘れていく傾向があるということらしいが、時代の流れとは言えこんなにいい曲が揃っているのにと惜しい気がする。若いミュージシャンが工夫をこらして上手く作り直せば折角の彼の名曲にも浮かぶ瀬があろうと思うのだが。 BARRY HARRIS p, GENE TAYLOR b, LEROY WILLIAMS ds 1975.June.4 XANADU SIDE 1 HOT HOUSE, SOULTRANE, THE CHASE, LADYBIRD SIDE 2 CABASH, IF YOU COULD SEE ME NOW, THE TADD WALK, OUR DELIGHT
by jamal2
| 2022-04-23 06:10
| 暮らしとジャズ
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