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めい一杯イキッてます! IN THE LAND OF THE GIANTS

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自転車を買った。それも折り畳み式20インチ(20インチはちょっと小ぶりだが、街乗りとしては充分)のマウンテン・バイクというキアイの入った奴だ。
イエローとブラックのちょっとオシャレな塗り。
ここ2、3年で急激に太って腹がでっぱってきたのもあって、それじゃあ、みっともないというのも理由のひとつだけれど、最大の理由はひきこもりがちな生活を変えたかった。
運動もろくにしないのに食欲だけは大せいだから、まるで妊婦のように腹が突き出ている。
ちょっと前なら寧ろガリガリのヤセで手足も細く嘗て職場では「キョジャッキー」などと揶揄されたものだった。
それが今やたいそうリッパな体躯となってしまった。運動不足のリッパな体で息も切れ切れ歩いている様などミットモナイというしかない。それも今回の決断のひとつの思うところだった。
で、キアイいっぱいに手に入れた自転車なのだが、なにせなまった足腰。
近くのコンビニまではいいとして、1キロ、2キロの距離になるとかなりキビシイ。
一緒に走っている自転車にはどんどん追い抜かれるは、へたをすると速足で先に歩いている人に追いつけないなんてことにもなる。いや、実際そうだった。
この連休中、心機一転せっかく買ったこの愛車であらたなライフ・スタイルをとイキガッテどこかに行こうとキアイを入れ、最近口コミで入手した情報で、ごく近所にオシャレなカフェがあるとのことで出かけようとしていた。その前に買った自転車の防犯登録を済ませてからとホームセンターに寄ってからだったのだけれど、既にそこに辿り着くまでが怪しかった。やや上り坂があるからか中途で漕ぐのをやめなければならないほどで、ホームセンターを出た後用心の為息を整えるのに一服してからその続きを目指したのだけれど、それが生易しいものではなかった。他の自転車にはどんどん追い抜かれ、行く途中に先を速足で歩いていた女性にも追いつけないというテイタラク。もう無理かと思ったところでやっと到着する具合で、ほっとするのも一方ならぬ始末。
そんな具合であるから、せっかくの連休ながら行きたいところはあれど、イキあがらずというのが本音だった。
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という具合なのだけれど、なまった体にいいかどうかはわからないが、キアイだけはめい一杯感じるエリック・クロスのこの一枚。
このレコード、いきつけのジャズ喫茶でエリック・クロスの何かある?とリクエストしたなかの一枚で、なかには既に持っているのもあったのでそれは省いて、偶然「スウィング・ジャーナル」のある特集版でこれについて書かれているのが頭の片隅にあったから、それを試しに聴くことにした。
それが大当たり。どうやらこれが本邦初というクロスのアルバムだったそうだ。Prestigeには既に何枚かがリリースされていたのだけれど、日本で紹介されたのはこれが初めてということだ。
余談だが、かの店にはいるといきなり襲ってきたのが、3人のおばちゃん達の談笑の無法状態。ああ、タイミング悪しと思って暫し諦めて座っていればそのうちと思っていたのがあまかった。
いつ終わるとも知れない感じで延々と続くわけで、ろくにジャズを聴けるカンキョーになかった。最早老人のデイホーム化した趣で、本人たちもそう言っているのだから間違いない。
さっきの私のリクエストは彼女らが退散するまで保留状態。というのも彼女らの椅子の後ろあたりにそれがあるというわけで、彼女らがどかなければひっぱり出せない具合であったからだ。
という塩梅だったのだが、漸く聴いてみてそのバイタリティのあるA面に思わず「これ、イイね」とシミジミ呟いた。一緒に聴いていたマスターももう一人の客もノリノリであった。

ライナー・ノーツに書かれたクロスの言葉に、ああ、なるほどと納得する内容も含めて書かれていたのでそれを紹介すると、ジャズの核心がインプロヴィゼーションにありながら、ジャズは今や多様化し、幾人もの人間が無数の方向を目指している。この点についてエリックの考え方は「ぼくだってたまにはフリーフォームやってみたい。たくさんの音楽が耳に飛び込んでくるし、オーネットやドルフィーのようなナチュラルナな演奏家も聴きこんでいる。彼らは真に自由なプレイヤーで、本当の意味で広さを持っていたんだ。ファラオ・サンダースのような人たちの演奏は調和が取れていないし、すばらしい美なんてこれぽっちしか生み出せていないでいる。自由は目の前にあるが、破壊しようしているものが何かをもっと知っておかなければならないだろう。自由である唯一の方法は、構成的な方法を使ってそれとの対称空間を生み出すことなんだ。僕は伝統的な方法を用い、それからフリーに入っていきたい。つまり伝統的な方法を使って自由な演奏が出来るようになりたいのさ」と。
引用がながくなったが、彼のこのアルバムを聴いて彼の意図するものがまさにそうで、これ以上付け足すことはないと思った。
蛇足的になるかもしれないが、感極まったほどに聴き入ったA面こそこのアルバムの命に思える。
刺さりこんでくるようなジャッキー・バイアードが尖ったピアノの音色で弾きだし手慣れたストライド・ピアノ風に奏でるところから始まるサマータイム。続いてリチャード・デイヴィスとのピアノレス風の流れからドラムスもピアノも加わって怒涛に入ってくる。そして再びデイヴィスとのやりとりをアラン・ドウソンとバイアードがバックでささえるという構図。どんなスタイルも弾けるバイアードならではのピアノがフリーぽくもなるところも聴ける。
そして、おっ!こう来たかというソー・フアット。そのスピード感たるや恐れ入る。これには聴いていたかのマスターもノリノリだったことは先にも書いた通り。
これでもう腹いっぱいになって、ゴッツアンとなってしまうという塩梅。
クロスはアルトとテナーを併用することが殆どで一曲の演奏中それらを持ち替えて演奏することもよくあるそうだ。しかしこのアルバムに限ってはテナーをブッカー・アーヴィンに任せアルトに専念している。
逞しい音色と疾風怒濤のスピーディさが印象的なアルバム。是非試されたし。

ERIC KLOSS as,BOOKER ERVIN ts, JAKI BYARD p, RICHARD DAVIS b, ALAN DAWSON
side 1
SUMMERTIME, SO WHAT
side 2
SOCK IT TO ME SOCRATES, WHEN TWO LOVERS TOUCH, THINGS AIN'T WHAT THEY USED TO BE




by jamal2 | 2022-05-03 10:11 | 暮らしとジャズ | Comments(0)


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